
古来から伝わる着物の柄の意味 ー古典的な文様ー
このコラムでは、日本に古来から伝わる着物の柄の意味について解説していきます。
前回の「生き物の文様」に引き続き、第三弾の今回は「古典的な文様」についてまとめていきます。
「植物の文様」についてはこちら→『古来から伝わる着物の柄の意味 ー植物の文様ー』
「生き物の文様」についてはこちら→『古来から伝わる着物の柄の意味 ー生き物の文様ー』
Contents
古典的な文様の意味
【糸巻文 ーいとまきもんー】
(『都香庵』HP引用)
文様の意味:不老長寿
「糸巻」とは、その名の通り糸を巻いておくための道具。
いつも寄り添っていることから、男女の良好なパートナーシップの願いを叶える文様です。
【団扇 ーうちわー】
(『神楽坂ほてや』HP引用)
文様の意味:除災招福
団扇は、中国では仙人の持ち物とされ、死者の霊魂を復活させる神通力があるとされました。
また、あおいで風邪を起こす作用があるため、神の力を高める呪力があるといわれていました。
【扇子 ーおうぎー】
文様の意味:除災招福
広げると末広がりになることから、繁盛、開運の吉兆をあらわすといわれています。
中国と日本では、王の権威や風の力をあらわし、悪霊を追い払うとされてきました。
また、「仰ぐ」ことは「あおり立て、さとす」という意味から、神霊を呼び起こし、邪悪を避けると信じられてきました。
扇は十二単を身にまとった位の高い人しか持つことが出来なかったものとして、富の象徴ともされてきました。
【貝桶 ーかいおけー】
(『呉服 徳佐』HP引用)
文様の意味:夫婦和合
貝桶とは、平安時代から伝わる「貝合わせ」という遊びの道具の一つです。
対になる貝を違えないところから夫婦和合の象徴とされました。
【隠れ蓑 ーかくれみのー】
(『東京きもの』HP引用)
文様の意味:除災招福
蓑は神様の旅装束といわれていました。
そこから、魔を祓い福を招く文様とされてきました。
【几帳 ーきちょうー】
(『KIMONOISM』HP引用)
文様の意味:雅さ、優美さ
几帳は、平安時代の家具の1つで、室内に立てて空間を仕切るために使われていました。
優雅な道具である几帳文様は、吉祥文様の1つとされ、打掛などの婚礼衣装や訪問着、能衣装などに多く描かれています。
【薬玉 ーくすだまー】
(『花色ころも』引用)
文様の意味:邪気払い
端午の節句に菖蒲や 蓬を吊るし邪気を祓う中国の風習は平安時代に日本に伝わり、この風習から発展し、室内の不浄を祓い邪気を避けるために薬を入れて吊るしたのが薬玉の起源です。
のちに、様々な花を飾り付けたものも薬玉とし、綺麗なものの故、きものの文様にも多く使われました。
【源氏車 ーげんじぐるまー】
文様の意味:発展
御所車の車輪のみを文様化したものです。
どこまでも回転(発展)するということから、縁起のよいものとされてきました。
【御所車 ーごしょぐるまー】
文様の意味:開運招福、華やかさ
御所車とは、顔出しNG、外を気軽に歩くことがなかった平安時代の王朝の貴族たちが外出に使っていた車のこと。
牛が引いたことから、牛車(ぎっしゃ)とも呼ばれていました。
貴族など限られた人しか使えなかったことから、富と華やかさの象徴とされてきました。
また、御所車に四季を彩る花を飾った車、花車は、「たくさんの幸せを招きますように」という意味も込められています。
【御所人形 ーごしょにんぎょうー】
(『シンエイ』HP引用)
文様の意味:子供の健やかな健康
結婚の時に贈る御所人形を意匠化したもの。子供の健やかな健康を願う文様とされています。
【独楽 ーこまー】
(『シンエイ』HP引用)
文様の意味:意志を貫く、お金が回る
まっすぐ芯が通っていることから「意志を貫く」という意味と、回る姿から「お金が回る」という意味が込められています。
【鈴 ーすずー】
(『和装ギャラリー みふじ』引用)
文様の意味:除災招福
古くから邪気を払う魔除けとして、神事や祭事で使われている。災いを遠ざけ、神仏の力で福を招くとされました。
【宝尽くし文様 ーたからづくし文様ー】
(『きものと和雑貨 ふくしま』HP引用)
文様の意味:開運招福
如意宝珠(願いのかなう宝のたま)、宝やく(かぎ)、打ち出の小槌、金嚢(きんのう、金銭を入れる袋)、隠れ蓑(かくれみの)、隠れ笠、丁子(ちょうじ)、宝剣、宝輪、法螺などを散らした文様。
福徳を招く文様として喜ばれ、祝儀のきものや帯などによく用いられています。
【宝船 ーたからぶねー】
(『シンエイ』HP引用)
文様の意味:前途洋々
宝船は七福神が乗り、宝物を乗せた帆船のこと。
新たな旅立ち、門出の前途洋々を願って描かれています。
【短冊 ーたんざくー】
(『えちごや』HP引用)
文様の意味:学問成就、仕事の成功
短冊とは、和歌や俳句、絵などを書く長細い色紙を文様化したもの。
そこから、学問成就や仕事の成功を願う柄とされています。
【鼓 ーつづみー】
(『シンエイ』HP引用)
文様の意味:豊作
鼓とは、砂時計型の胴の両端に鉄の輪を張った皮を当て、この2つの輪を紐で締めて張った形式の楽器。
楽器の文様は、大きな音色が鳴ることから、見事な身がなるという意味をかけて豊作の文様とされてきました。
【熨斗 ーのしー】
(『京都室町ストリート』HP引用)
文様の意味:おめでたい、華やか、高級
もともと熨斗は、鮑(あわび)の肉を薄く剥いで引き伸ばし、神の間に挟んで祝儀の進物や引き出物に添えたのがはじまりといわれています。
それを細長い帯状に文様化したのが「熨斗文」、細長い帯状の熨斗を数本束にしたのが「束熨斗」といわれ、これは打掛や着物で最もよく見られる文様です。
【蛤 ーはまぐりー】
(『みやたけ工房』HP引用)
文様の意味:縁結び、夫婦和合
蛤は対の貝しか合わないため、平安時代から貝合わせの遊びに使われてきました。
そこから、縁結びや夫婦和合の文様とされてきました。
【瓢箪 ーひょうたんー】
(『井澤屋』HP引用)
文様の意味:子孫繁栄、商売繁盛
仏さまが持つ神聖なお酒を入れる容器であり、観音さまが右手に持つ薬瓶もこの形といわれています。
風水では、病気などの悪い気を吸い取って退治してくれるとして、枕元に瓢箪を置くこともあります。
種が多いことから子孫繁栄、商売繁盛、厄除けの意味を持っています。また、金色の瓢箪は財運アップの縁起物とされています。
【鞠 ーまりー】
(『SHOPPINK京都』HP引用)
文様の意味:平穏無事
鞠文様で描かれる鞠は、御殿毬(ごてんまり)と呼ばれる鞠です。
平安時代後期にまだ幼いうちにお嫁入りするお姫様を思う女中たちが、嫁ぎ先で一人でも遊べるようにと着物の糸をほどき、鞠に巻いたり、刺繍を施したりして持たせたのが御殿鞠のはじまりといわれています。
嫁ぎ先での満ちたりた生活を、穏やかで平和な日々を祈る文様として描かれています。
【結び ーむすびー】
(『シンエイ』HP引用)
文様の意味:恋愛成就
結びの「むす」は新しい生命が生まれること、「ひ」は霊の意味。「むすび」は物事を生み出す力をあらわします。
昔は、手紙を細かくたたんで、ひとつ結びにした結び文は、縦に結ぶと事務的なもの、横に結ぶと恋文という決まりがありました。
そこから、恋愛成就の祈りが込められた文様になったといわれています。
【物語文 ーものがたりもんー】
文様の意味:知性、教養
物語文は、平安時代に成立した日本の物語『源氏物語』や『伊勢物語』などの物語の一場面を再現した文様です。 (上写真の傘の柄は、『伊勢物語』)
古典文学を楽しむことが教養のひとつとされた江戸時代、着ることで知性や教養、また題材となる物語の内容に準えた吉祥の意味があるとして愛されました。
【雪輪 ーゆきわー】
(『KIMONOISM』HP引用)
文様の意味:豊作
ふんわりとしたボタン雪を図案化した文様です。
雪輪文様は平安時代から使われてきました。
雪は五穀の精といわれており、その年が豊作になる吉祥の象徴とされていました。
【斧琴菊 ーよきこときくー】
(『市川』HP引用)
文様の意味:開運招福
斧は「よき」ともいい、琴(こと)と菊(きく)を合わせて、「良きことを聞く」と読めることから、ご利益があるとされました。
今も、手ぬぐいや浴衣、帯などいろいろな物に描かれている文様です。
古典的な文様の意味は、以上です♪
次回は、「有識文様」などの意味についてまとめますね!
どうぞお楽しみに!!