
古来から伝わる着物の色の意味
このコラムでは、日本に古来から伝わる着物の色の意味について、1つずつ解説して参ります。
「なんとなく好きだから着る」ももちろんオッケーです!
ただ、意味を知っていれば、「その日をどんな1日にしたいか」、「将来どんな自分になりたいか」を踏まえてもお着物を選べるようになるので、着物を着たり、着物を何かに仕立て直す時にまた違った楽しさが得られます。
意図して選んだお召し物や小物を身につけていれば、お会いする方との会話のネタにもなりますしね♪
Contents
着物の色の意味
色にはそれぞれパワーがあります
日本には、たくさんの色(伝統色)が存在します。日本人は古来より暮らしの中に多彩な色合いを取り入れ、それを楽しんできました。
日本に豊かな自然があったことから、色を繊細な感覚で感じ取っていたようです。
日本の伝統色は500近くあり、それぞれ興味深い名前がつけられているので、ぜひネットなどで検索して見てみて下さい。(そのうちこのブログで伝統色1つ1つもご紹介したいと思っています♪)
着物にも多くの色が使われていますよね。
これは、単に「おしゃれ」のためだけでなく、色のパワーをも取り込もうという意味もありました。
ここでは、古来日本人がそれぞれの意味に込めた思いや、風水の観点で色の持つパワーなどをご紹介していきます。
赤系
成人式の振袖などでよく見かける赤色。
赤色には昔から、「魔除け」の意味があり、悪を払い、善きものを呼び込む力があるとされています。
平安時代には日常から離れた聖域の建物や祭器に使われていたことから、一般の人々が赤の着物を着ることを禁止されていたため、憧れが強い色でもありました。
神社の鳥居や巫女さんの袴などに赤が使われていますよね。
ちなみに、現代で、結婚式に花嫁さんが着る打掛(和装の婚礼衣裳)に白(白無垢)と並んで赤色が多いのは、江戸時代の婚礼では、白無垢からお色直しで赤、そして黒と3色の衣裳を着ることから、その名残とも言われています。
この3色は「しるし」「しろし」と言う言葉に象徴される昼の状態から、夕日がもたらす「明し(あかし)」の状態を転機として、静寂と落ち着きを伴う「暗い」夜への移り変わりを衣裳で再現しているそうです。
自然を敬い、これと共存してきた日本人だからこそ、一日の巡りの過程において現れる自然界の状態を衣裳にしたのですね。
(他の説として、嫁ぎ先の「血」を表すという理由もあります。)
さらに、自然の中で赤は火の色であり、太陽の色です。
日本で古くから信仰されてきた神道の主神である天照の大神は太陽の神ですので、太陽の色である赤は、「神の力が宿った色」と言うことになります。
そして、農耕民族である日本人にとって太陽は「命を育む存在」「恵みの象徴」ですし、「血」の赤のイメージからも、赤は生命力や活力という意味を持っています。
現代でも、勝負下着に赤を身につけたり、営業マンが勝負商談の時に赤いネクタイをしたりと、ここぞという時の色のイメージがあるのではないでしょうか。
赤は、エネルギーを与えてくれたり、アピール力を上げてくれる色でもあります。
大事な勝負事を控えている時に身につけるのがオススメです♪
こう見ていくと、「赤」にはたくさんの意味が込められており、昔から親しまれてきた色なんだなとわかりますね^^
風水では、赤は熱、活力、興奮、情熱、指導力、野心の色とされています。
ピンク系
ピンクは、現代でも若い女性中心に人気がある色です。
洋服や小物などでも、女子力を上げたい、恋愛成就したいという方にはよく勧められる色ですよね。
身につけると、相手にも自分にもやさしくなれる色であり、心を軽くして緊張を和らげ幸福感を与える色でもあることから、恋愛成就の力になってくれる色と言われています。
パートナーを探していたり、パートナーとの仲をより良くしたい方はぜひピンク系を身につけて下さい^^
ピンクの中でも桜色は、その名の通り桜の花を連想させる色で、日本人には特になじみ深いものです。
ただ、その好感度の高さは世界共通で、古くはヨーロッパで結婚の象徴に使われるなど、時代や場所に関係なく広く愛されてきました。
余談ですが、白は日本では打掛などおめでたいハレの場で身に着ける色ですが、中国では葬儀の時に生成り色の服を身につける習慣があることから、縁起が悪い色とされてきます。(日本でも死装束は白ですが、左前はNGでも、白への印象は悪くないのが面白いですよね。)
国によって色のイメージは違うこともあるので、その点は気をつけましょう!
風水では、ピンクは優しさ、慰め、喜び、愛、思いやり、若さの色とされています。
黄系
黄色は、太陽の光の色。とても前向き、明るさの象徴、ポジティブな色です。
光の色ということで、温もりを感じさせる色でもあります。
無邪気になり、遊び心を取り戻してくれます♪
クリエイティブなことをする時に、力をくれる色です。
また、輝く光を浴びると金色になることや、収穫時の稲穂の色にも似ていることから、聖なる域を示す富や権力の象徴とされました。
黄色は春の色でもあり、「若さ」や「希望」、「変化」を表す色でもあります。
風水では、黄色は温和、陽気、創作力、知性、抑圧を緩和する色とされています。
茶系
茶色は、自然界では大地の色として私たちの身近にあります。
母なる大地として、万物の根底にあり、静かで不可欠な色として包容力をあらわしています。
江戸時代には、庶民の間で流行色となり多くの色名が作られました。
この流行色となった理由が、江戸の人たちらしくて好きなので紹介しますね。
元々は江戸の人々は華やかな柄物の着物を着ていたそうです。
しかし、江戸中期以降不況期に入り、幕府が華美な衣服を規制して倹約を推奨する奢侈(しゃし)禁止令を発布したのです。
奢侈禁止令とは、「茶色」「鼠色」「藍色」のみ使っていいという法律でしたが、当時の江戸の庶民は「他人と違うものを着たい」という欲求があり、茶系統や灰系統の多彩な色を生み出しました。
それらの色は1つずつ色名が付けられ『四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねず)』と総称されました。(「四十八」と言っても、100以上の色があったそうです。)
四十八茶の代表的な色名は「団十郎茶」「路考茶(ろこうちゃ)」「芝翫茶(しかんちゃ)」「梅幸茶(ばいこうちゃ)」など、当時の娯楽であった歌舞伎の人気役者の名前や俳名を冠した色でした。
多くの色彩を分析して見分けることができる日本人の繊細な能力は、世界トップクラスとされています。
江戸の人々も、色の違いを見分ける色彩感覚が非常に豊かだったことから、創意工夫によって数多くの色を生み出し、その違いを楽しんだというわけです。
着物の歴史には、お上からの締め付けがあったからこそ生まれた文化が結構あるんですよね!
現代を生きる私たちも、環境のせいにして「負」を「負」のまま受け入れるのではなく、その環境があるからこそ新しいものを生み出す工夫をして生きていくべきですね♪
(今は、コロナという環境をプラスにするかマイナスにするかという戦いをしている方、多いんじゃないでしょうか?^^)
風水では、茶色は「運気を育む色」とされることが多いです。
家庭運、仕事運、金運、健康運、恋愛運などあらゆる運気を育ててくれる色です。
緑系
緑色は、自然の木々の色です。
また、虹の7色のちょうど真ん中の色でもあることから、調和、バランスがとれる色でもあります。
心のバランス、自分と周囲のバランスをとりたい時に力をくれます。
色としても、緑色はどんな色とも相性が良いとされています。それは様々な色の花をつける草木の色のため、緑色は他の色との組み合わせやすいのです。
また、緑はすくすく伸びる草木のイメージから、健康や成長にもつながる色です。
風水では、緑色はナチュラル、調和、安定、友好、平和、適応性の色とされています。
青系
青色といったら、空の色、海の色というように、私たちにとっては身近な色です。
地球の色である青。潜在的に落ち着きと安らぎを感じさせてくれます。
それと共に、仏教の七宝の一つ「瑠璃」の色である青は、高貴さや神聖さといった意味もあります。
ただ、高貴な色でありながら紫ほど近づきがたい印象ではなく、やや庶民的な意味合いが強いです。
日本で青と言ったら「藍色」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
藍とは世界各地に古くから自生していたもので、今では「藍染」という染め物の印象の方が強いかもしれませんが、昔は多くの効果を持つ薬草として重宝されていました。
肌に塗ったり、煎じて飲んだり、人々の暮らしには欠かせない漢方薬だったのです。
だから、青は「浄化する」という意味も持ちます。
また、情熱の赤色との対比で、青色に冷静さというイメージを持ってらっしゃる方も多いかもしれません。
赤が「感情」なら、青は「思考」。仕事や勉強に集中できる色です。
何か集中して成し遂げる必要がある時にぜひ身につけて下さい!
風水では、青は冷やす、冷静、沈静、純潔、理性の色とされています。
紫系
紫と言ったら、高貴な色、艶やかさをイメージされる方は多いのではないでしょうか。
聖徳太子が定めた冠位の中でも、最上位の地位の人が身につけたり、平安時代でも気品や風格、艶やかさを備えた色として尊ばれました。
現在でも、紫は皇室のシンボルカラーです。
さらに、お坊さんの中で一番上の位の色が紫とされていることから、法事の時にお経をあげに来るお坊さん用に紫色の座布団を用意しているお家もあるのではないでしょうか。
紫が「高貴」とされてきた理由の1つとして、江戸時代までは、現代のように合成染料がなかったため、着物を紫に染めるためには、数少ない貴重な紫草の根が大量に必要であったため、紫色の布が希少で高価であったことも挙げられます。
また、高貴な色だけでなく、個性的とか奇抜な色というイメージを持ってる方もいらっしゃるのでは?
虹では一番端に位置していることから、極端さをもたらす色でもあります。
紫の取り入れ方によって、成熟した大人の品格を表すこともできれば、強い個性をアピールすることも出来るのです。
風水では、紫は神秘性、精神的、啓示、無私無欲の色とされています。
白系
白の着物といったら、結婚式の白無垢をイメージする方は多いのではないでしょうか。
白は心を浄化してくれる色です。心をキレイにして、新たな夫婦生活のスタートを歩むのに最適です。
さらに、白は「産着」や「死装束」で使われる色=この世のものではないことを示す色でもあり、「生まれた家の娘」として一度死に、「嫁ぎ先の家」で新たに生を受けることを暗示しているとも言われています。
(ちなみに、日本では平安時代から、花嫁衣装に純白が選ばれるようになりました。)
日本の昔の物語でも、神様が白い生き物の姿に変身して登場するというストーリーは多く存在するように、神聖な色とされてきたんですよね。
とはいえ白の着物を普段から着てはいけないわけではありません。少し黄みがかったアイボリーなどの色は、白の清楚な印象を残しつつ、なじみのある色となります。
風水では、白は幸せを包み込んで育ててくれる力を持っているとされています。
黒系
黒色は、冠婚葬祭で身につけることの多い着物の色です。
黒留袖や、打掛に黒が使われるのは、刺繍や金銀箔が映えるようにという意図もあるそうです。
「赤」のところでも触れましたが、黒は夜の空の色。
古くから神秘的な色とされてきました。
諸説ありますが、白無垢が「あなたの色にそまります。」という意味を含んでいるのに対し、黒振袖は、「あなた以外の人にはそまりません。」という意味が含まれているという説がありますが、黒はあらゆるものを拒絶する色でもあります。
個人的には、「あなたの色に染まります。」より、「あなた以外の人には染まりません。」の方が覚悟を感じて、黒の打掛に惹かれます^^
風水でも、誰かに対して気持ちを悟られたくないとか、ずけずけと土足で自分の領域に入ってくる人を遠ざけたりする時にパワーを発揮します。
ただ、風水的には黒はマイナス効果の方が強い色とされているので、使い方は要注意です。
まとめ
ここまで、着物の色の意味をご紹介してきました。
日本人が、自然と共に生き、自然を敬い、自然から学んできたか、感じられた方も多いのではないでしょうか?
余談ですが、ご自身の好きな色の意味を見た時に、ご自分のことを表していたり、またはそうなりたいと思っていたことではなかったですか?
活力が溢れている方が赤のものを身につけていたり、周りの人と調和したいなと思っている方が、無意識に緑のものを身につけていたり。
人間って自分が必要としているものを無意識にわかってるんだと思っています^^
ご自分の感覚を大切にしながら、色を上手に活用して、着物ライフや着物アップサイクルライフを楽しんで下さいね♪